PC メーカーによっては,音響専門の他社製スピーカーを搭載するといった拘りも見られますが.
コンパクトな筐体に配置する以上,左右の物理的距離にはやはり制約があり,ステレオ感に欠けます.
そこでネットラジオや動画視聴用に,以前から検討していた外付けスピーカーを購入.
実際に使ってみて判った,Bluetooth スピーカーの無線ならではの長所・短所をレビューします.
PC に外付けする Bluetooth スピーカーと言うと,無指向型(球体や円筒形で放射状に音を送り出すタイプ)か左右一体型(横長のボディの両端に L/R のスピーカーを配したタイプ)が多く,左右セパレート型は選択肢が限られる.
無指向型には,リビング中央に設置して,リスニング位置に縛られず音楽を鑑賞したり,充電・防水仕様で風呂に持ち込めるものもあります.
左右一体型が多いのは,セパレートタイプだと,どうしても左右のスピーカーを繋ぐ,電力・音声信号供給用の結線は不可欠で,折角の無線のメリットが損なわれるため.
つまり,ステレオ感を犠牲に無線の長所――美観や取り回しのしやすさ――を優先させている.
自分の場合,スピーカーは机に据え置きする前提,PC だけ必要なときに持ち運べればいい.
PC との通信さえ無線であれば問題ないので,数少ないセパレート型の中から物色しました.
価格.com のレビューやクチコミを参考にしたりして,5,000 円前後とコスパも良かったのが――
[Creative T15 Wireless - スピーカー](Creative Technology 日本公式)
[Creative T15 Wireless 発売のお知らせ](プレスリリース)
ほかに買う物もあったので,購入を先送りしていたら値上がりしてしまい,保留にしていたのですが.
先日,価格をチェックしてみたら,Amazon アウトレットに外装損傷のみの未使用品が出ていたので,最安値より 2,000 円ほど,値上がり前と比較しても 1,000 円以上安く買えました.
□ Creative T15 Wireless (SP-T15W) の主な仕様 ~設置編~
「T15」は左右のスピーカーと電力供給用の AC アダプタのみのシンプルな構成.
マニュアル等の紙類とパッケージは 11 ヵ国語で記述された多言語共通仕様で,AC アダプタも国によって交換できるようにプラグ部分が 2 種付属.
本体は基本的には左右とも同じデザインで,幅 9cm・高さ 20 cm・奥行 17cm.
入出力とスイッチ類は全て右スピーカーに集中.
背面にヘッドホン出力と LINE-IN(ケーブルは別売り).
ほかに左スピーカーへの出力と AC アダプタからの入力が順に上から並んでいる.
LINE-IN からの有線と Bluetooth での無線,同時接続した場合,両方の音声がミックスされて出力される.
PC と有線接続したまま,スマートフォンから Bluetooth で音楽を飛ばすといった使い方もできるわけです.
前面に電源・音量の兼用,トーンコントロールのふたつのつまみ(このぶん左より 1cm 突起)と Bluetooth の接続状態表示 LED を兼ねた CONNECT ボタン.
左スピーカーには,右スピーカーとの接続ケーブルのみ(直付けで取り外しは不可).
左右は最大でケーブル長の 1.5m まで離すことができます(延長ケーブルを用意すればもっと).
自室の机は奥が壁に接しているので,PC を挟む形でスピーカーを机上の壁際に置いてしまえば,ケーブルはノート PC の向こう側でほとんど目立ちません.
仕上げにコルクボードを壁に立て掛けて,見えていたケーブルにも目隠し.
これで LAN,マウス,キーボード,スピーカーの接続全てを無線化.
PC に繋がっているのは電源ケーブルのみと見た目すっきり.PC の持ち出しも簡単♪
机に向かった状態で聞くのが最適なように,T-15 にはやや上向きに傾斜がつけられているので,これが正しい使い方とも言えます.
もちろんお好みで,PC と一緒に机に並べずとも,ベッドで頭上に設置して寝ながら音楽鑑賞するといった無線ならではの使い方もできます.
通信距離圏内であれば,端末とスピーカー間の物理的距離に制約が無いのが強み.
ペアリングもこれと言った問題もなく済み,Windows 8.1 であれば追加のドライバ等も特に必要ありませんでした.
対応 OS については限定されていないので,Linux でも使えそう.
肝心の音質は,内蔵スピーカーと比べると,その差は歴然.
楽曲や左右に音が振ってある音源では特に際立ちます.
リネは普段 BGM はオフってるので,そこまで変化はありませんが.
以前はほとんど聞こえてこなかった,松明の燃える低音の SE などがはっきりと聞き取れるように.
公式サイトや価格.com の情報では発売時 (2013/10) の Bluetooth 2.1+EDR となっていますが,2015/03 に Bluetooth 4.0 にバージョンアップ(公式から参照できる PDF は更新済み).
公式サイトにも付属のマニュアルにも消費電力の記載は無く,特筆もされていませんが,端末側が 4.0 に対応していれば,通信の省電力化が図れます(たぶん).
通信距離は Class2 のため見通し 10m 程度.基本的には端末と同室か隣室程度までですね.
□ 使ってみて判った改良点
当然,いくつか改善して欲しい部分もあります.
まずは物理的な仕様.
本体前面は光沢のある,いわゆるピアノブラック.
コストを抑えるためか,カバーや保護ネットの類は無く,コーンすら剥き出し状態.
指紋や埃が目立つので,個人的にはネットで保護されていて扱い易いほうが好み.
Bluetooth の CONNECT ボタンの状態表示 LED にも難点がある.
どの端末とも接続していない時は点灯,ペアリングの接続待ちの状態で早い点滅.
端末と接続中は遅い点滅.つまり,使用中は常時ゆっくりと点滅している状態なのだ.
気が散る人もいるかと思うので,常時点灯か消灯がデフォルトにすべきでしょう.
消灯だと電源が入っているかも判らなくなるので,次の改善点にも関係してくる.
電源の ON/OFF はボリュームを最小まで絞って,カチッとするまで捻ると「切」.
電源スイッチが別になっていれば,ボリューム位置は最適レベルに調整したら,あまりいじる必要はないでしょうが.
この仕様では電源を入れ直す度に調整が必要.それなのに.
ボリューム位置はつまみに刻まれている●で一応確認できるのですが,これが見づらい.
電源スイッチと別になっていてほぼ固定で使うなら,それでも悪くはなかったのですが.
貧乏性の自分には長時間使わないときに点けっぱとか精神衛生上よろしくない.
こういう仕様にするなら,電源の ON/OFF の表示も兼ねたランプにしておいて欲しかった.
回避策として,ON/OFF スイッチの付いた電源タップを挟んで,本体は常時 ON にしておく手もありますが.
ただ,仮にタイマー付きの電源タップを利用しても,次に挙げる問題点がネックとなって,時刻指定して電源を入れて使うようなこと(例えば,目覚まし代わり)はできない.
(2016/07 追記)
PC 周りのコンセントが不足してきたこともあり,雷対策(無線ルータをやられた経験あり)も兼ねて[Buffalo の雷サージガードと個別スイッチ付きの電源タップ]を追加購入.
電源の入・切はそちらで行い,スピーカーのつまみはボリュームの微調整にのみ使用することで快適になりました.
スイッチ付きの電源タップは,周辺機器の電源が集中管理できるので非常に便利です.
ペアリングの仕様にも疑問符.電源を入れ直す度に未接続状態に戻る.
CONNECT ボタンを押すと最後にペアリングしていた相手に接続する,といったひと手間が要る.
複数の端末と接続を切り替えて使う前提でこの仕様になっているのかもしれないが,PC1 台に固定で使うぶんには煩わしい.
いちばんの問題が,出力先の切り替え.
一般的には PC の LINE-OUT にスピーカーやヘッドホンを有線接続した場合,自動的に PC 本体のスピーカーは OFF になり,外部出力に切り替わる.
接続を外せば,すぐに本体スピーカーがアクティブになる.
有線だと意識することもないこの動作だが無線の場合,少し状況が違ってくる.
Bluetooth スピーカーの場合, 音声再生中にスピーカーを接続したり,接続後に ON/OFF すると.
音声を再生しているアプリケーションは再起動しないと,本体・外部の出力先が自動で切り替わらない場合がある(最悪,ON/OFF のタイミングでアプリが落ちる).
例えば,動画の再生中にスピーカーの電源を入れると,動画の音声は PC 本体のスピーカーから出力のまま.
この状態で別のアプリを起動すると,その音は Bluetooth スピーカーから聞こえる.
本体と外付けのスピーカー両方から音が出ているという,有線なら有り得ない状態になるわけです.
あくまで自分の場合であって,Bluetooth スピーカー全般に共通の現象なのかは判りません.
症状の再現性は PC 環境――PCの構成とスピーカーといったハード面のほかに,OS とサウンド関連を管理しているソフトウェアやドライバ,Bluetooth スタック,音声を再生しているアプリケーションなどのソフト面――にも依存しそうですし,となれば鉄板と言える解消法もない,無線スピーカーを使うデメリットの一つかも.
□ 総括
いろいろと改良点もありますが,数千円の投資でもはっきりと実感できるだけの音質の向上.
玄人から見ると物足りないようですが,TV やノート PC の内蔵スピーカー代わりとしては価格対性能比として十分.
内蔵スピーカーのみ活用してきたノート PC ユーザは,有線か無線かは置いておくとしても外部スピーカー,試してみる価値はあると思います.
最後に Bluetooth スピーカー購入に当たって,ほかに留意しておくといい点を挙げておきます.
端末とスピーカーが別室にあるなど,物理的な距離や障害が大きくなる場合は通信距離 100m の Class1 の製品のほうが向いています.
スピーカーではなくヘッドセットの話になりますが,Class1 であればヘッドセットを付けたままで家中歩き回ることもできるとか.
使い方次第では,複数端末からの共有に便利なマルチペアリング対応,有線接続の有無も要 Check.
音質に拘る人ならハイレゾ対応やコーデック(転送時に適用される,音声データの圧縮・展開技術.方式によって,情報損失=音質の劣化に差が出る.T15 は SBC),端末側の Bluetooth モジュールやスタックといったところにも気を配る.
標準で定められている SBC (SubBand Codec) は Bluetooth の規格に含まれるが,AAC (Advanced Audio Coding) / aptX(アプトエックス)/ LDAC といったより優れたコーデックにはライセンス料が必要となるため,そのぶんが価格に上乗せされているということも踏まえておく.
なお,同社だと「T15」のほうが後継なのですが,全モデルの「T12」のほうがコーデックと低音域再生の関係で評価(と価格も若干)が高いようです.
関連サイト:
[価格.com - Bluetoothスピーカー | 通販・価格比較・製品情報]
[Bluetooth - Wikipedia]
[ヲチモノ- 【スピーカー】クリエイティブ 『T15 Wireless』 レビューチェック](ユーザレビューへのリンクまとめ等)
[細かすぎるBluetoothスピーカーの選び方 高音質派、アウトドア派……用途に合ったおすすめ機種とは?](日経トレンディネット)
[BluetoothのSBCって何ですか?](afnf.net)
[【Bluetoothヘッドホン】【Bluetoothスピーカー】AAC/aptXとは?](ELECOM サポート情報)
[「コーデック」で変わるBluetoothの音質](GetNavi web)
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